93YZF750SPのFCRキャブ修理(2002年4月)


1.修理に至った経緯

  事の発端は去年の夏頃峠で走っていた時に、8000rpm近辺で谷が感じられたのでニードルのセッテイング検討しようとキャブを開けた所から始まる。
トップキャップを開けた所、3番と4番のリンクアームCompの樹脂ローラ(スロットルバルブと組み合わされる部分)が変形、異常摩耗しているのを発見した。
当然正常に転がらずに、偏摩耗した部分で滑って動いている状態。当然摩耗分ガタがあるので開閉時のバルブ開度は正常時(1番、2番)と狂ってくるものと推定される。

それは後々修理することとして、ニードル段数変更しようとニードルセットスクリューを緩めようとすると、か…硬い…緩まない…ということで一旦キャブボディから取り出して作業しようと思い取り外したところ3番、4番何れのスロッットルバルブの樹脂ベアリング(中に金属ベアリングが入っていない箇所)の中心軸部分が溶融変形していてスムーズに回らないことを発見。

3番、4番のリンクアームCompの樹脂ローラおよびスロットルバルブの樹脂ローラの不具合は、去年のウンコバイク屋での事件が原因だな。(これについては別途後日アップしよう)

ニードルセットスクリューは1〜4番何れも硬くて緩まずニードルが外れた時にはスロットルバルブが破壊され使用不能な状態になると判断されたので、外すのを断念。
これの原因についてだけはこちら側によるものだろう。タイミング的には前オーナーの時からだったか、自分が購入してからの放置プレイ(1回も触ったことが無かった)なのかは不明。

結局去年は元のまま組み込んで乗ってしまったけど、不安要素がいっぱいで望ましい状態ではない。
という訳で今年はシーズン到来前に修理することに決定。

リンクアームCompを購入しようとYZFのパーツリストを見ると部品として出していない Σ( ̄ロ ̄lll) のでキャブボディごとの購入も最初考えた。
しかし、YZF750用としてはラインナップされているけどSP用としてでは無くTPSも対応していない。
サンダーエース用等のTPS対応ボディにYZF750のジェッティングで出荷してくれるか確認をすると駄目とのこと。最近のショップは融通効かんのか?

そのような時にバイク屋(当然上のバイク屋じゃないよ)で、リンクアームCompはKEIHINの補修部品として購入出来るという情報を入手したので現行キャブボデイ修理で対応することにした。


  ↓ こんな感じで摩耗してる。


2.部品の注文

  YAMAHA純正仕様とKEIHIN仕様でモノが異なる可能性が少なからず考えられたのでとりあえず「リンクアームComp」と「スロットルバルブ」を1個ずつ注文して寸法を確認することとした。

リンクアームCompはYAMAHA純正として出していないので、KEIHIN仕様で部品が同じなのを祈るしかない。
スロットルバルブはYAMAHA純正として出しているが当時の価格で\17,000円/個(今は更に値段上がっているものと思われる)と高いのでKEIHIN仕様\14,150円/個でチャレンジすることにした。(バイク屋には寸法は保証出来ないと言われたのであくまでも自己責任で注文。)

  入荷したものを早速寸法比較。

スロットルハルブCompは、同じ寸法であることが判明。まずは第一関門クリア。

 

次にスロットルバルブ。

まず、外形は同じ。
右上のローラ部(写真の黒い矢印の部分)は樹脂のみ(ベアリングなし)で、それ以外はベアリングが入っていてそれに樹脂ローラが組まれているのも同じ。

ただ…ちがう所が1点。
ボア側の切り欠きの部分の寸法が異なるのだ。
KEIHIN取り寄せ品(写真左)は、切り欠き高さが1.5mm、純正(写真右)は2.5mmなのだ(Rは同じ)。

まあスロー系のセッテイングでカバー出来るとは思うが、実際に付けてみるまでは何とも言えない。

  上記の確認でKEIHIN部品で行ける(はず?)と判断したので残りの部品を注文。

追加注文部品は
1)リンクアームComp:1個   (部番:1061-816-2100  価格:\6,250円/個)

2)スロットルバルブComp:3個(部番:N501-20C00    価格:\14,150円/個)


3)ベアリング:4個(部番:1119-803-7002 価格:\350円/個)
※スロットルバルブ1つに対して、ベアリングが4個であるがそのうちの1個である樹脂ベアリングについては別途購入となる。

その他に注文した部品は
3)ニードルセットスクリュー:4個(部番:1421-800-2000 価格:\500円/個)
※純正のものはあと8個持っているのだが、これはマイナスドライバーで回すタイプのものであり、KEIHINのものはアレンレンチ(六角)で回すタイプなので今後のメンテ性を考え購入。

4)シール(浮動バルブ用):4個(部番:1099-817-6000  価格:\400円/個)
※3番と4番のシールが損傷していたのでまとめて取り替えることとした。

5)アジャストスクリュー(PS):1個(部番:N446-05A00 価格:\630円/個)
※キャブ整備中に、PSの1つがネジが駄目らしく回すのも硬くヤバそうだったので購入。
純正だとAssy(スプリング、Oリング、ワッシャ込みで\1,150円/個(当時価格)なので止めた)

6)ジェットニードル:4本(部番:N427-OC××× 価格:\540円/本)
※純正のスロットルバルブCompは一応原型とどめたまま残しておきたかったので注文した。

う〜ん、これだけ部品注文したら新品キャブの半額くらいの値段になってしまった…。まあいいか。


3.組み付け作業

  1)リンクアームCompの組み付け
 

リンクアームCompはスロットルシャフトを貫通しているので、交換するにはキャブボディをばらす必要がある。

分割前に各部品にマジックペンで合いマーク入れておき、組む際にどこの部品か分かるようにしておく。
サイドのネジを緩めてキャブボディを分割する。組み込み状態をメモ等して覚えておく。

あとは、新品のリンクアームと入れ替え逆の順序で組み立てる。
(組む際にスロットルシャフトが通るローラーベアリング部にグリス(PTFE)アップ実施)

 

  2)スロットルバルブCompの組み付け
 

スロットルバルブにジェットニードルをセットしてニードルセットスクリューで固定する。樹脂ベアリングも組み付け、浮動バルブのシール交換後組み合わせてキャブボデイに挿入する。

←写真の左が当時のRC-SUGOのタイプ(純正も同じかも?)で右のが今回装着したKEIHIN品。アレンレンチ(六角)で回すタイプであり整備性が良さそうだったので選択。

あとは、新品のリンクアームと入れ替え逆の順序で組み立てる。

 

  3)同調設定
 

最初に基準キャブレタ(2番)の同調位置を設定する。写真の部分(スロットルシャフトとの隙間)の基準値は0.6mm。今回スロットルバルブの切り欠きのことも考慮して気持ち多めの0.8mmに設定。

残りのキャブも基本的に0.8mmに合わせ、あとはスロットルバルブボア側の隙間を見ながら微調整する。(2番目のものには触らず、他のをこれに合わせる)

調整が終ったらトップのカバーを組み付ける。

 

  4)PSの交換
 

フロートチャンバーカバーを外してPSを交換する。(カバーを外さないで緩めようとするとカバーと干渉して外れないばかりかネジ山を損傷する。)

写真上のが純正品で下のが今回購入したKEIHIN取り寄せ品。(KEIHINのやつの写真撮っておくの忘れたので上のものを画像編集したのでちょっと変かも?)

KEIHIN取り寄せ品は、ネジ部から調整部(マイナスドライバで回す部分)が短い。まあ、ネジ部から先端部までの寸法は同じなので機能上は問題ないが、調整時にフロートチャンバー部の穴を覗いてマイナス溝の位置を確認しなければいけないのでちょっと面倒ではある。

PSの交換が終ったらフロートチャンバーカバーを取り付ける。

 

  5)スロー系の調整
 

キャブを車体に組み付け後、エンジンをかけてスローの調整をする。

スロットルバルブの切り欠きの違いによるアイドリングへの影響を心配していたが、実際には影響がほとんどなくストップスクリューで若干調整する程度で済んだ。

次にPSの戻し量を調整する。
基準戻し量を目安にして、一番アイドリングの高くなる位置に調整する。
KEIHINのマニュアルでは1気筒ずつ調整すると書いてあるが、そこまですることもないと判断して4気筒分まとめて調整した。
RC-SUGOのキャブセッテイングパーツ組み込みの場合の基準PS戻し量は1-1/2であるが、今回は1-1/4で落ち着いた。
1-1/2戻しの時はレーシングしてアクセルを素早く戻した場合に基準アイドリングから少し落ちた後に戻るというような現象が見られていた(濃い?)のだが、1-1/4戻し(薄くする)でその傾向がなくなりアイドリングが安定するようになったのでセッティングの方向性としては合ってるはず。
(多分さらに薄くすると、基準アイドリング〜若干上の回転数の間でタコがフラフラするのだろうと思う)

最後にアイドリング回転数を再確認、調整する。

 

  6)実走試験
  無負荷状態でのセッテイングも終ったので実走試験に入る。(未知のジェッテイングでこれからセッテイングを出すわけじゃないから大げさなものじゃないけど…)

とりあえず街乗りで4速全開くらいまで試みたが、低〜高速までのつながりも特に問題なし。
同調もきちんと取れているようなので、ツキも問題無いしアイドリングも安定している。

後は峠等に持っていった時の様子見となるが、MJの1〜2ランク程度の変更かNJの段数変更くらいで調整出来ると思う。


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